Success Story

岡村建興株式会社様(前編)現場が「自分の言葉」で動き出すとき、会社はどう変わるか ―土木工事業・岡村建興株式会社が向き合った、DXの手前にあったもの―

建設・土木業界でデジタル化の波が広がっています。
しかし多くの現場では、「良さそうなツールを取り入れてみたが、あまり会社が良くなった気がしない」という話をよく聞きます。

システムを増やしても、現場がつながらない。
計画はあるのに、具体的な手はモヤがかかったように見えてこない。
社員達は自分の言葉で課題を話せていない。

問題は、技術やツールではないのかもしれません。
何を変えるべきか、誰がどう動くべきか——その”整理”が追いついていないだけかもしれない

こうした「ツール導入の手前にある問題」に気づき、向き合いはじめた会社の事例を紹介します。
川崎を拠点に、土木工事・公共工事・コンクリート製品製造を手がける、岡村建興株式会社様です。

今回のインタビューでは、岡村社長と関口工場長に、変化のきっかけと現場の今を伺いました。

 


はじめに

「DX」という言葉からまず思い浮かぶのは、システムやツールの導入だと思います。
しかし実際に現場を変えていくとき、最初に問われるのはもっとシンプルなことです。

誰が、何に困っているのか。
経営の数字は、現実とどうつながっているのか。
現場の社員が、自分の言葉で会社の課題を話せているか。

インフラを支える仕事として地域に根を張る一方、成熟市場の中で価格競争・人手不足・技能承継という課題に向き合う岡村建興様。
今回の取り組みは、「会社としてどこへ進むのか」を、改めて問い直す時間でもありました。

1. ツギハギのDXからの出発

―必要に迫られて増えていった仕組みを、会社全体の視点で見直す―

インタビュア まず、取り組みが始まる前の状態から教えてください。

岡村 もともとのきっかけはビジネスマッチングでした。ただ話していく中で、オフィスのITセキュリティやPCまわりの環境について「ここは整っていませんね」と指摘を受けたんです。

うちは図面や生産計画の一部には仕組みがありましたが、他は手書きだったり、個人のExcelで何とかしていたり。必要に迫られるたびに足してきた、いわばツギハギの状態でした。

インタビュア 会社の未来を考える上でも、課題が見えづらかったのでしょうか。

岡村 毎年計画はつくります。ただ、どうしても今年の延長で考えてしまう。目標はあるのに、そこへ向かうための具体的な手が見えない。そこを考えるための時間もなく、焦りだけがありました。

2. 「目が元気ではない」現場への危機感

―活気のあった現場を知っているからこそ、感じていた違和感―

インタビュア 以前の現場と今の現場、どのような違いがありましたか。

関口 昔は、みんなの目が輝いていた時代がありました。でも最近は、業績が悪い時期が続くと、トップ層も下を向いてしまう。自分自身も、どこかで「やっても無駄だな」と思ってしまっていました。

だからこそ、現場の人が自分の意見を出し、予算を考え、実績をつくっていく経験が必要だと思いました。研修に参加した製造ラインと出荷管理のリーダーたちも、最初は後ろ向きかなと思っていたけれど、実際にはとても真面目に考えてくれました。

関口工場長の言葉には、長く現場を見てきた人ならではの温度がありました。
かつては平均年齢が30代と若く、やんちゃな人もいて、イベントもあり、工場には活気があったといいます。
その記憶があるからこそ、少しずつ守りに入っていく空気も、社員の表情の変化も見逃せなかったのかもしれません。

 

「一人で考えさせられるのではなく、社内に同じように考え、助け合える仲間がいる。
それがすごく心強かったと思います。」
―関口工場長

 

工場長は、厳しく叱りつけるのではなく、生き生き働ける雰囲気をつくりたいと話します。花を育てる、トイレをきれいにする、日々の会話を重ねる。
工場長が大切にしてきたこうした行動は、DXとは直接関係ないように見えます。
しかし、現場が変わる土台とは、こういう日々の積み重ねの先にあるのかもしれません。


3. 数字と声を可視化する

―言葉にできなかった悩みが、投資判断できるテーマに変わるまで―

インタビューを通じて印象的だったのは、岡村社長も関口工場長も、「教えてもらった」という言い方をほとんどしなかったことです。

「気づいた」「考えるようになった」「見えるようになった」。

こうした言葉が繰り返されるのは、一時的な支援ではなく、 “自らで経営を考え、改善していける”企業体質に変化している証拠かもしれません。

 

インタビュア フォーバルの支援で「見えるようになってよかった」と感じたことはありますか。

岡村 毎月の経営数字をグラフで可視化して、前年と比較することです。自分で見ると、どうしても予算と比べてしまうんです。でも前年と並べて見ると、「去年と何が違うのか」を考えるようになる。資材高騰の影響なのか、若手が減っていることなのか。社内だけの問題でなく、外の変化ともつながって見えるようになりました。

インタビュア “数字を見る“というより、数字をきっかけに”考える“ようになったと。

岡村 そうですね。毎回「何が原因だと思いますか」と聞かれるので、絞り出しながら考えるんです。言いながら、自分で気づくことがある。そこが良かったと思います。

伴走支援の中では、外部環境調査や経営数値の可視化に加え、現場リーダー向けの研修も実施されました。日々の困りごとを洗い出し、ムダ時間や影響額を考え、どのように投資判断できる形へ整理するか。デジタル化を「ツールを入れる話」で終わらせず、現場の課題として捉え直す。現場リーダーが自ら課題を言語化していくワークです。

インタビュア 工場長にとっては、研修の中でどんなことが見えるようになりましたか。

関口 工場では、作業がどんな状態にあるのかが、途中では見えていませんでした。結果だけは分かっても、その途中が見えない。今回一番良かったのは、彼らが考えていることが見えるようになったことです。自分で考えて、何が問題なのかを課題に変えてくれた。これだったら取り組めるよね、という形になったのは、最高の見える化だったと思います。

4. 答えを出さないコンサルティング

―選択肢を渡し、一緒に考え、進む段階では横で走る―

コンサルティングというと、課題に対して「こうすべき」という正解が提示されるイメージがあります。
それは分かりやすい反面、自社の現場と合わなければ、むしろ動きづらさにつながることもあります。

岡村建興様が感じた違いは、フォーバルが最初から答えを決めつけなかったことでした。

 

インタビュア これまでの支援と比べて、違いを感じたところはありますか。

岡村 一番は、最初に回答を出さないことです。これまでのコンサルティングでは、課題が出ると「こう解決しましょう」と手法を教えていただくことが多かった。フォーバルさんは、まず「こんな情報があります」「こういう見方もあります」と材料をくれる。そこで「あ、この方法はうちでも取れるかもしれない」と考えられるんです。

岡村 ただ、具体的に進める段階では、一緒に走ってくれる。今回のDX研修でも、現場の中に入って、普段は表に出てこないメンバーを引き出してくれました。答えを教えるのではなく、彼らが持っている問題点を可視化してくれた。それが全然違うと感じています。

インタビュア 工場長は、その進め方をどう受け止めましたか。

関口 アドバイスをもらっても、最後は工場で選ぶんだよ、というスタンスが印象的でした。「絶対これだ」と言われると、現場に合わないとき動きづらくなる。でも、こういう手もあるよ、だったら考えられる。現場に合うかどうかを、こちらも考えながら進められるのは大きいです。

5. 挑戦できる組織へ -失敗を「学び」に変えられる会社になるために-

岡村建興様を取り巻く市場は、決して簡単ではありません。コンクリート製品や道路関連の領域は、インフラ需要がなくならない一方で、成熟市場であり、価格競争や人材不足、原材料・エネルギー価格の変動と向き合う必要があります。だからこそ、維持更新・防災・省人化といった社会課題に応える力、地域に根差した信頼、そして現場が自ら改善を進める力が重要になります。

会社を変えるという決断は、簡単なことではありません。岡村社長はなぜ変わろうと思えたのか。

岡村 それはもう、業績が悪くて苦しんだからです。それに尽きます。

国の機関に頼って銀行を紹介してもらって、本当に死ぬ思いをしました。全部やってくれると思っていたら、結局自分で全部やらなきゃいけない。「絶対にリストラはしたくない」と決めていたのに、そのリストラから取り掛からなきゃいけないとか。そこで「今までのやり方は何も通用しない」と思いましたね。

岡村 もう一つ、業界の先輩から、「私を否定するのがあなたの仕事だよ」と言われたのが刺さりましたね。「前任者と同じ事をやるなら、あなたに代わった意味がないでしょう」と。その人は業界団体の会長さんで、「そういう考えで社長業をやっているのか、すごいな」と。

経営者にとって苦しいのは、「分からない」ことそのものではありません。分からないままでも、社員や取引先、金融機関、地域に対して、決断する立場に立ち続けなければならないことです。

インタビュア 今後、どのような変化につなげていきたいですか。

関口 やはり人材です。新しい人材も必要ですが、今いる人材をうまく育てて、また彼らが次の人を育てていく。社長の承認を受けて、「もう自分でやるんだ」「やれるんだ」という環境を与えたいと思っています。

2人(現場リーダー)がね、やらされた感じじゃなかったじゃないですか。自分で狙ったところを課題にして、自分の言葉で発表できていた。それは本当に良かったと思いますよ。そういうものを引き出してもらえた。

関口 すぐにうまくいくとは思いませんが、失敗するってことは、挑戦するってことじゃないですか。 チャレンジして失敗したとしても、それは学びや教育にはなっている。そういう繰り返しで会社が変わっていく。そういう組織になってくれれば、きっと儲かる会社になれると思っています。

岡村 今は、外にも「こういう研修をやっていて、情報投資をするんです」と話しています。正直、ワクワクしています。DXというとツールの話になりがちですが、今回の取り組みで、現場の社員が自分の言葉で課題を話すところまで来た。ここからが本当の勝負だと思っています。

DXというと、成功か失敗かで語られがちです。でも、関口工場長は、組織として、失敗を繰り返しながらも挑戦できる環境作りを目指すといいます。デジタルにするのではなく、デジタルで”変える”、本来のDXの姿がありました。

 

 「社員の話を聞いていて、彼らが『自分の言葉でしゃべっている』と感じました。
ここからが本当の勝負だと思っています。」
―岡村社長

編集後記

取材を終えて思うのは、この会社の変化は、ツールより先に「問い」からはじまったということです。

数字を見て「なぜ?」を問う。困りごとに名前をつけ、課題として向き合う。現場のメンバーが自分の言葉で話しはじめる。

そういう変化は、外から植えつけられるものではありません。企業ドクターによって引き出される、と言った方が近い。岡村社長と関口工場長の言葉からも、その静かな確信が伝わりました。

問題が課題に変わったとき、現場は自分の言葉で動き出す。

DXの話を聞きに行ったのに、帰りには「会社が変わるとはどういうことか」を考えていました。

主な支援テーマ

  • 外部環境調査:コンクリート業界・道路業界の市場環境、リスク、チャンス、成功要因を整理
  • 経営数値の可視化:毎月の数字をグラフ化し、予算だけでなく前年比・外部要因と結びつけて捉える
  • DX SMART研修:現場リーダーが困りごとを可視化し、投資判断につながる課題・要件に変える
  • IT/セキュリティ環境の整理:PC環境や既存ツールの状態を確認し、場当たり的な増設から脱却する視点を提示